ムシ女
重力の重みを全身で受け止める事が困難で、壁に手を当てて立った。


手を伸ばし、ビニールの隙間から手を出してみた。


外の部屋の空気は、箱の中よりも涼しく感じられた。


その涼しさを求めて、あたしは背伸びをして隙間から顔を出した。


ガランとした部屋の中、朝の陽ざしが降り注いでいた。


箱の中で感じていたよりも随分明るくなっていたようだ。


あたしはベッドに置かれている時計に視線を向けた。


朝の6時半を差している。


こんな時間まで学校から帰ってこられなかったことなんて、今まで一度もない。


地震の影響のためか、なにかあったのかもしれない。


そう思ったところで体力の限界に到達して、あたしはその場に倒れるように横になった。


外の空気のおかげで少しだけ心地よくなっている。


そのまま目を閉じると、あたしは落ちていくように眠りについたのだった。
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