ムシ女
そう思うと、自然と涙が頬を伝って流れていた。


何度も何度も和の笑顔が浮かんでくる。


もっと一緒にいたかった。


もっと沢山好きって伝えたかった。


ずっと隣にいられると思っていた。


強い風がふいて、あたしの体はグラリと揺れた。


窓の隙間から飛び出すように身を乗り出した。


トンボの羽がバタバタと羽ばたき、まるで本当に飛んでいるような感覚になる。


あたしの両足が窓枠から離れた瞬間、あたしは目を閉じたのだった……。
< 109 / 155 >

この作品をシェア

pagetop