ムシ女
あたしはミィに助けられた時、確かにホッとしていた。


死ぬことに必要なのは勇気じゃない。


絶望や無だ。


今のあたしはまだ完全には絶望していない。


和の顔を思い出せるから、無にもなっていない。


その事を改めて感じさせられた。


「ニャァ」


ミィは不服そうな顔のままひと鳴きして、机の上に寝そべった。


しかし眠る気はないようで、ジッとあたしを見ている。


「なに? どうしたの?」


そう聞くと、ミィは大きく息を吐き出した。


まるで呆れたため息をつかれているような気分だ。


ミィはチラリと自分の体を見た。


「え? まさか、背中に乗れって言ってる?」


まさかと思いつつもそう聞くと、ミィは「ニャァ」と、また返事をするように鳴いた。


「うそ、本当に?」


あたしはそう聞きながらも、ミィの背中へと回った。
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