ムシ女
とにかく昆虫が大好きで、昆虫採集や昆虫についての研究で成果も上げている生徒だ。


地味だけど賢くて真面目。


そんなイメージの生徒だ。


「今、なんか声が聞こえた気がするな」


男子生徒はそう呟き、注意を見回す。


そして顔をしかめて鼻を抑えた。


いろんな薬品が混ざり合ってキツイ匂いがしているのだ。


「助けて!!! ここにいるの!!!」


あたしは男子生徒のズボンの裾を両手で強く引っ張った。


その時……男子生徒の視線がゆっくりとあたしへ向けられるのがわかった。


大きくて黒い両目があたしととらえる。


「え……?」


困惑した表情と声。


「お願い……助けて!!!」


あたしは震える声でそう言ったのだった。
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