ムシ女
☆☆☆

「定松(サダマツ)さんは、どうして科学室にいたの?」


帰りながら陽介君はそう聞いて来た。


「百合花って呼んでいいよ。あたし今日は科学室の掃除当番だったの」


「あぁ。そうだったんだ。体が小さくなったおかげで棚に潰されなくて済んだんだな」


「そうだね。でも、これいつ元に戻るのかな」


あたしは自分の体を見下ろしてそう呟いた。


「さすがにわからないな。でも、科学の先生に色々聞いてみるよ。薬品で小さくなったなら、薬品で戻れる気がするしね」


「うん。ありがとう」


そう言うと、途端に眠気が襲って来た。


たった数時間でいろんな事があったから疲れたのかもしれない。


あたしは陽介君のポケットの中で座り、そのまま目を閉じたのだった。
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