ムシ女
声を張り上げすぎて激しくむせた。


「ここだよ! ここにいるよ!」


掠れた声で再び叫ぶ。


ドタドタを慌ただしく階段を駆け上がって来る音が聞こえて来る。


「ちょっとあなたたち、警察を呼ぶわよ!?」


「呼びたきゃ呼べばいいだろ!」


和の声がドアの前から聞こえてくる。


あたしはケースに両手をついて見守った。


ギィと音を立ててドアが開く。


「か……ず……」


和が、部屋の中に入って来る。


その後ろからお母さんの姿も見えた。


「部屋にはなにもありません!」


陽介君のお母さんが2人の間から割って入って来るのが見えた。


そして、あたしと視線がぶつかる。


和とお母さんがその後ろからあたしを見つけるのが見えた。


「なんなのこれは!!」


叫び声を上げたのは陽介君のお母さんだった。


小さな少女が虫かごの中に入れられているのだ、それだけでも十分衝撃的だろう。


しかもあたしの背中にはセミの羽が付けられ、右足は切断されているのだ。
< 140 / 155 >

この作品をシェア

pagetop