ムシ女
「でも、実験するってどうやって……」
そう言ったとき、みんなの視線が教室の後方へと向いていることに気が付いた。
あたしは上半身を起こしてそちらへ視線を向けた。
そこには口をガムテープでふさがれ、手足をロープで椅子に固定されている陽介君の姿があったのだ。
陽介君は血走った眼でこちらを見て、低いうなり声をあげている。
「まさか、みんな……!」
「あぁ、いつに実験台になってもらう」
和はそう言い、拳を握りしめて陽介君を睨み付けた。
「そんな! 実験室の薬品を陽介君にかけるつもり!?」
「そうするしかないのよ」
お母さんが震える声で答えた。
「でも……」
「百合花、お前が言いたいことはお父さんたちもちゃんとわかってる。でもな、娘の足を切断されてオモチャのように弄ばれたお父さんとお母さんは、あの男を許すつもりはないんだ」
お父さんが、いつもの優しい口調でそう言った。
優しいけれど、決して考え方を覆さない強さを持った声だった。
そう言ったとき、みんなの視線が教室の後方へと向いていることに気が付いた。
あたしは上半身を起こしてそちらへ視線を向けた。
そこには口をガムテープでふさがれ、手足をロープで椅子に固定されている陽介君の姿があったのだ。
陽介君は血走った眼でこちらを見て、低いうなり声をあげている。
「まさか、みんな……!」
「あぁ、いつに実験台になってもらう」
和はそう言い、拳を握りしめて陽介君を睨み付けた。
「そんな! 実験室の薬品を陽介君にかけるつもり!?」
「そうするしかないのよ」
お母さんが震える声で答えた。
「でも……」
「百合花、お前が言いたいことはお父さんたちもちゃんとわかってる。でもな、娘の足を切断されてオモチャのように弄ばれたお父さんとお母さんは、あの男を許すつもりはないんだ」
お父さんが、いつもの優しい口調でそう言った。
優しいけれど、決して考え方を覆さない強さを持った声だった。