ムシ女
☆☆☆~美衣side~

「助けて百合花!! あたしはここだよ!!」


百合花の家の車が窓の外に見えた時、あたしは懸命に声を張り上げた。


ここは陽介君の家の客間だった。


地震があったあの日、あたしは百合花を探して実験室へ戻ったのだ。


先生が一旦様子を見に来て危ないから外へ出ろと言われた。


あたしは百合花がいないことを念入りに探して外へ出ようとした。


しかし、その時に余震が起きたのだ。


それは大きな余震で、あたしは自分の体を支え切れず床に倒れ込んだのだ。


様々な薬品が混ざり合った部屋の中、あたしは自分の体が見る見るうちに小さくなるのを見ていた。


自分の身にこんな事が起こるなんて考えてもいなかった。


小さくなったあたしに気が付いてくれる人は誰もおらず、あたしはあの教室に1人取り残されていた。


陽が暮れていき真っ暗になると机の下で1人身を縮めて震えていた。


食べ物もなく、助けもこない教室の中で絶望を感じていたのだ


だけど学校が開始された日、あたしは陽介君に拾われたのだ。


陽介君は虫博士として有名で、少し変わり者だったけれど、とても優秀な生徒だ。


あたしは助かったんだ。
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