ムシ女
「なんで? 可愛いじゃん」


「そうかもしれないけどさ……」


そう言いながら白いソファに座り、テレビをつける陽介君。


ニュース番組では一番大きな地震があった地域の事を伝えている。


ここから数十キロ離れた地域だ。


「家の中は大丈夫みたいだし、電気も通ってる。必要なものだけそろえて学校に避難しようと思ったけれど、これなら平気かな」


「見た感じはそうだよね。ここって、学校から遠いの?」


眠っていてこの場所がどこかわからないあたしはそう聞いた。


「あぁ。電車で40分ほどかな。学校より揺れも少なかったみたいだし、ここにいた方が安全かもな」


「電車で40分!?」


あたしは目を丸くしてそう聞き返した。


自分がそこまでグッスリと眠ってしまっていたことにも驚いた。


「とりあえず、買い物に行こうか」


ニュース番組を確認した陽介君はそう言い、ソファから立ち上がった。


「買い物?」


「あぁ。薬品を頭からかぶったんだから、着替えが必要だろ?」


そう言われてあたしは自分の体を見下ろした。
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