ムシ女
陽介君はあたしの為に人形の服を3着と、人形用の食器を買ってくれた。


「さすがに小遣いで人形の家までは買えないけど、とりあえずはこれでどうにかなるだろ」


そういう陽介君にすごく申し訳ない気持ちになる。


あたしの体が元に戻ったら、ちゃんとお礼をしなきゃな。


家に帰ると赤い小さな車が1台停まっていた。


「帰って来たな」


陽介君がそう呟いて、あたしに胸ポケットの中に座って隠れているように言った。


あたしは言われた通りポケットの中で座った。


陽介君のお母さんがどんな人か気になったけれど、姿を見せて驚かせては申し訳ない。


「ただいま」


「おかえり、今日は遅かったじゃない」


「ちょっと買い物に行ってたんだ」


「そうなの。地震は大丈夫だった?」


「学校の中はメチャクチャだよ。この辺より強く揺れたみたいだし、しばらくは休まされると思う」
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