ムシ女
☆☆☆

陽介君の部屋は黒で統一されていた。


今まで見て来たものが可愛い物ばかりだったので、部屋の暗さに目が慣れない。


電気をつけると壁一面に虫の標本が飾られていて、あたしは一瞬息を飲んだ。


「あぁ、ごめん。気持ち悪い?」


「う、ううん。少し驚いただけ」


あたしは左右に首をふってそう言った。


陽介君は昆虫博士だ。


このくらいの部屋当たり前だ。


自分にそう言い聞かせて、針でさされている虫たちを見る。


今のあたしよりも大きな虫もいて、ゾクリと背筋が寒くなるのを感じた。


今の体でこんな虫に出会ったらどうすればいいんだろう?


逃げる?


いや、きっと虫の方が足が速いだろう。


すぐに追いつかれて捕まってしまいそうだ。


捕まったらどうなるんだろう?


食べられてしまうんだろうか?


考えれば考えるほどマイナスな方向へと気持ち傾いていく。
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