ムシ女
「サイズは大丈夫か?」


「うん。少し大きいけど大丈夫だよ」


ジーンズにTシャツというラフな服を選んでくれたのは、きっと陽介君の優しさだ。


人形の服は派手なものが多いけれど、その中でも地味で動きやすいものを選んでくれている。


「それならよかった」


陽介君はそう言い、目隠しになっていた本を閉じて机の本棚へと戻した。


本棚と言っても、机の奥に本立てを置いてそこに並べているだけだ。


陽介君はティッシュを何枚か取り、それを長方形に折るとあたしの横に置いた。


「これ、ベッド代わりにならないかな?」


そう言われてあたしはティッシュの上に座った。


フワリとした心地よい感覚。


普段使っているベッドよりも深く沈み込んで、手触りもよかった。


「すごく気持ちいい!」


あたしはそう言い、ティッシュのベッドに寝転んだ。


「それならよかった」


「陽介君、なにからなにまでごめんね?」


「大したことはしてないよ」


「あたしの体が戻ったら、ちゃんとお礼をするからね」


そう言いながら、また眠気が襲ってくるのを感じていた。


心地いいベッドの上でまどろんでいく。


「そんな事、気にしなくていいよ」


そんな陽介君の言葉に返事をすることもできず、あたしはまた深い眠りに落ちたのだった。
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