ムシ女
「あたし、科学室にいたんだ。目が覚めたら小さくなってて、それから……」


どんどん思い出してきて、血の気が引いていくのを感じる。


助けてくれたのが陽介君じゃなかったら、あたしは今頃どうなっていたんだろうかと。


「陽介君に助けてもらって、家に連れてきてもらったんだっけ」


そう呟いた時、自分の声が反響している事に気が付いた。


あたしが小さくなっているからそう聞こえるんだろうか?


しかし、周囲を見回してみると昨日と何かが違う事に気が付いた。


地面はティッシュだ。


これは昨日雄介君があたしのためにベッドとして用意してくれたから。


でも……世界が歪んで見えるこれはなに?


あたしは恐る恐る立ち上がり、そっと手を伸ばした。


そして触れる、透明なガラス。


科学室で何度も見たことがある瓶とそっくりな事に気が付いた。
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