ムシ女
いや、陽介君は真面目な男子生徒だ。


スマホを奪うという感覚ではないのかもしれない。


ただ善意で、あたしの両親を心配させまいとして先にメールを送ってくれたのかもしれない。


あたしはできるだけプラス思考になるように考えを巡らせた。


しかし喉はカラカラに乾き、不安で胸は押しつぶされてしまいそうだ。


あたしはその場に座り込み、大きく呼吸を繰り返した。


大丈夫。


大丈夫。


陽介君は昨日あんなにも優しくて、あたしを助けてくれたんだから。


「そろそろ朝飯の時間だな。先に食べてから、残りを持ってくるから待ってろよ」


ほら。


ちゃんとあたしの分のご飯も考えてくれるんだから。


大丈夫。


「うん」


あたしはそう言い、できるだけの笑顔を陽介君に向けたのだった。
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