ムシ女
「完璧な姿は綺麗じゃない。お前もそう思うだろ?」


「お、思わない!」


声が震えた。


後ずさりを続ける足が絡み、その場に倒れてしまった。


すぐさま雄介君の手が伸びてきて、あたしのウエストあたりを鷲掴みにする。


強い力に苦しくなり、声が出ない。


必死で口から酸素を取り込んでいると「あぁ、悪いな」と、手の力を緩めた。


その時にはすでにカッターナイフはあたしの目の前にあった。


刃はあたしの手のひらほどの大きさだ。


指先を傷つけただけでも痛いのに、こんなもので体を裂かれたらきっと死んでしまう!


そう思い、必死でもがく。


「あまり動くなよ。変な場所を切っちまうだろ」


陽介君がイライラしたようにそう言い、あたしを握りしめる手に力を込めた。


「やめて! 切らないで!!」


「あ、そうだ。どうせだから逃げられないように足にしようか」


陽介君の言葉にあたしは動きを止めた。


足を切られるの!?


どこまで深く?


もしかしてすべて切り落とされてしまう!?


陽介君があたしの足をジロジロと眺めているのがわかる。
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