ムシ女
そう思い、何度も何度も繰り返し瓶に体当たりをする。


肩はジンジンとしびれるような痛みが走り、瓶は少しぐらつくくらいで倒れる気配はない。


だけど、揺れ始めた瓶を倒す事はできるはずだ。


まるでブランコのように瓶の揺れは徐々に大きくなっていく。


あたしは痛みを耐えて唇をかみしめた。


右足から暖かなものが流れおちていく感覚があり、チラリと確認した。


傷口から血が流れ出して足首まで伝っていた。


それでもあたしは体当たりすることをやめなかった。


もう少し。


もう少し。


頑張ってもコルクの栓を外す事ができなければ無意味に終ってしまうとわかっていた。


それでも、やめることはできなかった。


瓶の揺れは大きくなり、グラグラと足元がおぼつかなくなる。


その時だった。


部屋のドアが開いて微かな光がさしこんだことに気が付いた。


もしかして陽介君の家族!?


そう思い、あたしはドアへと視線を向ける。


しかし、そこには誰もいない。


不思議に感じていると、床付近に黒い影が動くのが見えた。


夜の闇と同化してしまいそうな黒いソレは「にゃぁ」と小さく鳴き声を上げた。


「猫……?」
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