苦手だけど、好きにならずにいられない!
「俺が痴漢に間違われた時、日村、寺島先輩はそんな事する人じゃない!ってハッキリ言ってくれたよね?
あれ、すっげー嬉しかった。
その時だよ。俺、こいつと結婚したい!って思ったの。でも、日村も俺も仕事忙しくて恋愛どころじゃないって雰囲気でなかなか言い出せなかった。
……チキショウ、旅行から帰ってきたらデートに誘って54階のバーとか行ってカクテル飲みながら気持ちを伝えようって計画してたのに、なぜかこんなタイミングになっちまった。
…こんな俺だけど、付き合ってくれないか?日村のこと、一生大事にするから」
寺島先輩がスッと私の方へ手を伸ばした。わりとマッチョな腕。
私がその手を握ってあげれば………
私も寺島先輩が好き。でもラブじゃない。
不意に私の脳裏にデレクの笑顔が浮かぶ。
いちご狩りに行った時のデレクの穏やかな笑顔。私の為にピアノを弾いてくれたあの夜。
あの日の様々なシーンがジグソーパズルのピースのように浮かんでは次々にはまっていく。
やがてそれは、ひとつの強固な塊となる。
先輩の手を握ってあげることは、
出来ない……