苦手だけど、好きにならずにいられない!

「…すみません。
昨夜はなんだか眠れなくて」


ナオミはブッフェのサラダを取るために私の向かいの席にコーヒーを置いた。一つ一つの動作がダンスしてみるみたいに優雅だな、と感心してしまう。


「だめじゃない。今夜はプレ・オープニングパーティーがあるのよ。
プロモーターがそんなやつれた顔してちゃparaisoの評判ガタ落ちだわ。

モーニングを食べ終えたらエステに行くよ!莉子も一緒にね。
アーユー、OK?」


ナオミの張りのある声は、甘いだけじゃなく有無を言わせない力強さを持っている。

私は「イエス。わかりました!」と返事をして、手を付けずにいたクロワッサンを頬張った。



フェイシャルエステはしたことがあるけど、全身というのは初体験だ。

一流のエステテシャンを揃えたベリロイのエステは、このリゾートの目玉商品の一つなのだ。

ホテルの一室に設けられたそこは、マッサージ用ベッドが二台並んでいた。お香が焚かれて、不思議な良い匂いが漂っている。

カップル・エステと言って恋人や夫婦、友達同士が並んでエステが受けられる仕組み。
見られたくないなら、カーテンで間仕切りすることも出来る。




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