苦手だけど、好きにならずにいられない!
「あの店で、ひときわ輝いていたのが日村莉子、あなたよ。
気が利いて手際が良く、不思議なことに私がいらいらしている時に限って可愛らしいラテアートで和ませてくれる。
新事業のスタッフとしてこの上ない人材。私の仕事は秘書、デザイナーだけに留まらないの。優秀な人物が身近にいたら、ヘッドハンティングするのも私の重要な任務なのよ。
そして私にはもう一つ目論見があった。
日村莉子は、デレクの生涯のパートナーに相応しいのではないかなと。
そう考えていたの」
私がデレクの生涯のパートナー?
いやいや。私なんて身分が違い過ぎる!
「莉子。あなたには、デレクに愛される資格がある。
仕事柄リッチな男はたくさん見てきたけど、お金があればあるほど嫌な人間になるの。でも、デレクは違う。
彼ほど誠実な人間はいない。莉子。デレクを捕まえたら一生幸せになれる。私が保証するわ」
コンコン、とノックの音がした。
エステテシャンではなく、支配人のアリシアだった。
「ハイ、ナオミ。デレクからあと30分で空港に着くと連絡ありました」