苦手だけど、好きにならずにいられない!


ブーケを置いたのは誰だか分かってる。元カレ木佐宗馬だ。

こんな事をして人の心を取り戻そうなんて、なんて浅はかな考えなんだろう。
心底軽蔑する。


高校の同級生で17歳からの付き合いだった。でも、1年前、10年の交際に終止符を打った。

シアトル・コーヒーに転職したばかりの頃だ。私の親友・洋子と浮気していたのが原因だった。


公認会計士の宗馬はプライドが高くて気難しい面もあったけど、いつか結婚したいと思っていた。洋子も宗馬も同窓生で青春時代を共有したかけがえのない存在だったのに。


ファミレス勤務でポロポロになった私をとても心配して、B.C Squareにあるシアトル・コーヒーに誘ってくれたのは洋子だった。

新しい道を切り開くきっかけを作ってくれたことに、すごく感謝していたのに。


シアトル・コーヒーで働き始めて元気を取り戻した私は、ある日の仕事帰り、なんとなく宗馬のアパートに寄ろう、と思いついた。

いつもは必ず連絡してから行くのだけれど、その日は店長にコーヒーの淹れ方を初めて褒められ上機嫌だった。

気分が高揚していた。

宗馬は風邪気味だと言っていたから、缶入りの生姜のスープを届けてあげよう。

外から見ると、宗馬の部屋の電気は点いていて在宅だとわかった。

< 18 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop