苦手だけど、好きにならずにいられない!


ーー宗馬、来ちゃった!風邪大丈夫?


合鍵を使い、部屋に入った私の目にありえない光景が写った。


上半身裸でベッドのシーツに包まった宗馬と洋子。


足元にガツンと鋭い痛みが走る。
紙袋に入った缶詰めを落としてしまったのだ。


痛みなんかどうでもいい。

この出来事は一刻も早く忘れよう、とすぐに外に出た。あんなの彼氏じゃない、親友じゃない…!

見知らぬ他人だと思い込もうとした。なのに自然に涙が出てきて止まらなかった。こんな風に人に裏切られたのは初めてだった。


『莉子の事が心配で相談しているうちにそういう雰囲気になってしまったの。本当にごめんなさい』


ラインで謝罪した、そのひと月後に、洋子は以前から交際していた彼氏とあっさり結婚した。


花束は毎週水曜の夜に置かれる。

なぜかは分かってる。水曜は宗馬の会社がノー残業デーだから。

だから、かち合わないように水曜はシアトルコーヒーに寄って時間を潰して8時過ぎてから帰宅するのが私の決め事になっていた。


宗馬との関係を完全に断つ為にラインをブロックし、フェイスブックもツイッターも止めた頃からそうしてるから、もう半年くらい続いている。


あ……


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