苦手だけど、好きにならずにいられない!


「馬鹿やろう。何を隠そう俺は前職ウェブデザイナーだぜ。
残業ハンパねえから、お笑いやる時間なくて頭きてこっちからクビになってやった。
日村、見てろよ。スゲー凝ったヤツ作ってみせるわ!」

「わあ、すごい!期待してます!」


私は立ち上がり、目の前で踏ん反り返る男に握手喝采を浴びせた。
スタンディグオベーションというヤツ。


「ハイ。盛り上がってるわね」

甘くてハスキーな声がして、出入り口の方を見る。濃いグレーのスーツにスカーレット色のフリルブラウスのナオミが出先から戻ってきた。パッと周囲が華やぐ。

「寺島先輩がベリロイのホームページを作ってくれるそうです。…あ、お茶かコーヒー淹れましょうか?」


給湯室に移動しようとする私をナオミは手振りで遮った。


「あなた達、ランチはまだなの?まだなら53階のレストランに行きましょ。ご馳走するわ」

「えっ…」


53階レストランって…舌を噛むような店名のあそこ?毎年ミシュランで5つ星だかを取ってるとこだよね?


「でも、ナオミさん。すごく人気のあるお店ですから予約していないと。いきなりは無理なのではないでしょうか?」

「オーナーと昔からの友人なの。ランチくらいなら大丈夫よ」

私の心配をナオミは笑って一蹴した。



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