苦手だけど、好きにならずにいられない!
デレク・ワタナベ様からの差し入れでございます、と恭しく言って。勤務中なのにナオミは「Thank you」と、それを嬉しげに受け取った。
「Well…んー、日本の言葉でなんといったかしら?そう…『無礼講』
今日は無礼講よ!
普段はバラバラだけれども困ったときはお互い協力しましょうね。
莉子、入社おめでとう。私達の幸運とニューヨークにいるデレクに。乾杯!」
ナオミの音頭でグラスを傾けた。けれど、仕事は待ってくれなかった。
メインディッシュの皿が下げられたと同時にナオミのスマホが振動し、彼女だけ途中退席する羽目になってしまった。
「オーケイ、二人で楽しんで」
苦笑しながらも、直ちに仕事モードに戻る。
だから、私の前にはナオミの分までデザートが並んでいた。
「ナオミってスゲーよなあ。
あの人、本職はインテリア・デザイナーなんだぜ。ベリロイのインテリアも全部ナオミが手掛けたんだと」
コミ能力高い寺島先輩は、オフィスの共用ドリンクコーナーで関連会社の社員達と顔見知りになり、なにやら情報を得てくる。
「ふうん。すごいなあ…才色兼備ってナオミのためにある言葉よね」
それよりももう一つの事実の方が、私には驚きだった。