苦手だけど、好きにならずにいられない!
「あ、日村、俺おしっこ行くし。お前先行けよ」
せっかくエレベーターが来たのに、乗り込む直前になって寺島先輩がくるりと身を翻した。
先客のおじさん2人がじろりとこちらを見る。
「すみません、乗ります」
頭を軽く下げたのに彼らは無反応だった。眼鏡を掛けたごく普通なおじさん達だけれど、この上の54階はVIPラウンジ。そこから降りてきたんだから、どこかのお偉方なんだろうな。
…あ、胸に向日葵のバッジ。この人達は弁護士なんだね。なるほど。
このビルに勤めているなら年収4000万越え、まあまあエリート街道まっしぐらってことね。
そういえば思い出した。ここの弁護士事務所ってイケメン集団がいるって評判なんだよね。シアトル・コーヒーにもそれらしき人達来てたっけ。
イケメンはイケメンなんだけど、なんだかどいつもこいつもプライド高くていけ好かない感じだったなー。
しかし、身分が分かるとなんだか圧迫感がある。私からはお酒の匂いするはず。
なるべく息するのを少しにしなきゃ…
大きな法律事務所が入ってる30階でおじさん達が降りて、一人になったとき、私は妙な開放感を感じていた。