苦手だけど、好きにならずにいられない!
「とんだ災難でしたね…」
私は、先輩のためにコーヒーを淹れてあげた。それを一口飲んだ後、先輩はようやく語り始めた。
「…日村と別れた後、なかなか次のエレベーターに来なくてさ。
俺含めて5、6人くらいが同時に乗り合わせたわけ。
で、下に降りるにつれ、少しずつ人数増えていったから、8階についたときは10人くらいいたかな。
さあ、降りようとしたら、ピンク色の制服を着た女が俺の右手首をガッと掴んだんだ。
えっ、と思ったら『この人、チカーン!私のお尻を触ってたの!誰か捕まえてえ!』って金切声で大騒ぎして。
こえー、キチガイだ!って思って、女の手を振り切ってやったら、一瞬にして周りの奴らに取り囲まれた。
絶対やってない!
冤罪だよ!って言っても誰も信じてくれない。警察呼びましょうか?とか女に相談したりして。
は?警察なんて冗談じゃねえ、なら地下の防災センター管理室に連れて行けよ、防犯カメラがあるから画像を見てから犯人扱いしろや!って女らと管理室に行ってモニターで確認してもらったわけさ。
で、やっぱりだよ!
痴漢はピンクおばさんの勘違い!おばさんの後ろにはでかいバッグを持った女の人が立っているわけ。
俺はその後ろで目を瞑って身じろぎもしない。バッグかなんかがおばさんのケツに当たって痴漢と勘違いしたんだろ!
あの女、この俺を犯罪者にしようとしやがって!ぶっ飛ばしてやりてえ…」
物騒なセリフとは反対に、先輩の声が急に弱々しくなった。