苦手だけど、好きにならずにいられない!
『俺を心配してくれてさ。あの件でPTSDに陥っているなら相談してくれって。
まじ、ビックリしたよ。いきなりピンポーンで出て見たらお付きのドライバーとデレクが立ってんだから。
母ちゃんなんか舞い上がっちまって、ハロー、ハウアユーとか言っちゃってさあ。で、デレクも笑顔でハイ、初めましてとか言って母ちゃんハグしちゃたりして。
分刻みのスケジュールなのに、わざわざ帰国して訪ねてきてくれるとか…
いいボスに恵まれたな、と思ったよ』
「そうだったんですか。玄関開けたら社長立ってるとか。焦りますよねー」
『だろ?じゃ明日な』
「あ、はい。じゃ、」
ね、と言い終わらないうちにプープー音が鳴る。
んもう、せっかちなんだよね。
言いたいことだけ言うとさっさと電話切っちゃうの。
でも、いっか。これが寺島先輩だから。
ほっこりした気分で家路を急いだ。
10時から見たい刑事モノの海外ドラマがあったのを思い出したから。
夕飯は手抜きちゃお。パスタ茹でて、缶のボロネーゼソースかけて。サラダはキャベツときゅうりだけでいいや。
「莉子!」
誰かに名前を呼ばれた。
自然に歩が止まる。
聞き覚えのある声。
……嫌な予感がする。