苦手だけど、好きにならずにいられない!
ストーカーの罠
「…そんなに警戒しないでよ。何度メールしても返信ないから、心配でさ。もしかしてスマホ替えた?」
「……」
「君が怒るのは当然だよな。許してくれと言う方がおかしいよな。自分でも分かってる。
だけど、俺と莉子の10年を嫌な形で終わらせたくない。もう一度だけ俺の話をきいてくれ。そしたら自分の中で気持ちを整理出来ると思うんだ…な?」
宗馬がすがるような目をする。
「…5分だけでいい。時間をくれないか」
「そうすれば水曜日のブーケもヤメてくれる?」
ふっと下を向いて宗馬が笑った。
苦笑、といった風に。
「ああ。やめる」
「…わかった。じゃ5分だけね。うちに来て」
ここから私のアパートまでは歩いて10分。付き合っていた頃は宗馬もよく遊びにきた。
私の部屋に入ると宗馬はあちこちに視線を走らせた。
「うーん。莉子の匂いがする。相変わらずきちんとしてるね」
匂いって…気持ち悪。人の部屋、ジロジロ見ないでよ……こういう無神経なとこほんとイヤ。
宗馬を招いたことを軽く後悔した。
それでも一応客人だから温かいコーヒーを淹れてあげる。宗馬の好みは砂糖ティースプーン1杯と1/2。
この1/2っていうのが宗馬のメンドくさいところ。