苦手だけど、好きにならずにいられない!
「で、何を話したいの?時間は限られているんだから」
「ああ…ちょっとその前にはっきりさせておきたいんだよね」
宗馬が折り畳みテーブルの前で正座をした。私も彼の正面に正座した。
「はっきりさせたいこと?」
「…ああ。莉子、お前、新しいオトコ出来ただろ?」
「ええっ?」
突拍子もない質問。
………なんなの、この人?
「とぼけるな、隠しても分かる……」
宗馬の銀縁眼鏡の奥の目が死んでいた。ぞっと寒気を感じた。
「い、いてもいなくても関係ないでしょう、あなたには」
わずかに声が震えてしまう。
「そんな事が言いたかったの?もう帰ってよ」
「俺は!帰らない!」
ダン!宗馬が両手で思い切りテーブルを叩いた。
ガチャンとコーヒーカップが短い悲鳴をあげる。宗馬が立て膝になり、私の鼻先に人差し指を突きつけた。
「だったら!だったらなんで花束を捨てた?どうして枯れてもない、綺麗なままの花束を!
そんな残酷なことが出来るのはお前に男が出来たからだろ!」
「…綺麗なままの花束?」
先週の水曜日、私はガーベラのブーケを確かに棄てた。
「なんでそれを宗馬が知ってるの?」
「それは…なぜだと思う?」
宗馬は不敵な笑みを見せた。