苦手だけど、好きにならずにいられない!
信じられない……なんでこの人はこんなことを…
涙が勝手に溢れてきて止まらなかった。
「ごめんな…莉子、泣かないでくれよ」
私の上になったまま、宗馬が私の髪を撫で始めた。
私は思い切り頭を振り、イヤイヤをした。
「どいてよ…」
「いや、どかない…良くしてあげるから…」
宗馬の激しい息遣い。汚い雑巾で首筋を撫でられてるみたい。痩せて見えても男の体は意外に重い。
身動きが出来ず、されるがままになるしかなかった。
「莉子…莉子。いい匂いだ…」
ハアア…ハアア……生臭い吐息を耳元で聞かされているうちに、お腹の底から怒りが込み上げてきた。
「やめろ!どけっつうの!」
思い切りの力で宗馬の細い体を突き飛ばした。
横へ吹っ飛んだ宗馬がぎゃ!と悲鳴をあげた。割れたカップを踏んづけてしまったようだ。
宗馬がかかとと押さえて痛がっている隙をついて、私は一目散に走り出した。靴も履かずに外へと飛び出す。
外は真っ暗だった。
必死で走って表通りに出た私は振り返った。
車の往来だけで人通りはない。宗馬が追いかけてくる気配はなかった。
ああ、良かった……
ん?
安堵したのもつかの間、足に痛みを感じた。