苦手だけど、好きにならずにいられない!
ビッキーのやる気のなさは目に余るものがあり、パンフ配りは面倒くさがるし、冷えてるものがあるのに、ぬるいジュースを出しちゃうし。
人形のお釣りを千円単位!で間違えるし、私の目を盗みまくってスマホいじるし。初日からずっとそんな調子で。
でも、まあモデルだけあって立ってるだけで華になるし、お客様も集まってくれるし…と我慢していたのだけど。
今日、遅い昼休憩から帰ってきた私は、ブースの前で茶髪の若い男ときゃっきゃ話し込んでるビッキーを目にして愕然とした。
ブース内では熟年夫婦のおばさんの方がベリベリドールを手にしてキョロキョロしてる。会計を探しているらしい。
ビッキーめ、対応しろよ!と怒鳴りたくなった。
寺島先輩は用があって昼前に帰ってしまったのでビッキーひとりで留守番だったのに。
私が10分でサンドイッチを食べ終えて戻ってきたら、この有様かよ?
最終日だったので5時で閉場だった。
お疲れ様の声があちこちで飛び交う中、後片付けを始めた私に声を掛けてきた。
「莉子さーん、ビッキー帰るねー3日間ありがとお!」