苦手だけど、好きにならずにいられない!
「もういい。お疲れ様でした」
私は大袈裟に溜め息を吐いて、ビッキーに背を向けた。気付いたらビッキーはもう帰ってしまっていた。
ビッキーを傷付けちゃったかな…
10歳も年下の子にムキになってしまった。
一抹の後悔が胸をよぎるが
「間違ったことは言ってない。今はやるべきことをやろう」
そう自分に言い聞かせた。
はあ……二度目の溜め息を吐いた。
本革のクリームベージュのソファに横たわり、都会の煌びやかや夜景を眺めている。
文句の付けようもなく美しい景色だけれど、見ていると無性に不安に駆られる。
見渡す下界には、蟻のように無数の人間が存在すると思い知らされるのだ。人それぞれの事情も感情も意味を持たない無機質な世界。
そんな世界とこの部屋は繋がっている気がした。
温度も湿度も快適で季節感もないシェルター。
ここで暮らしていると、人間らしい感情を失ってしまいそうだった。