苦手だけど、好きにならずにいられない!
ストロベリーハンティングに行こう!
次の日の昼過ぎ。
リンコーンという甲高い音を立てて部屋のチャイムが鳴った。デレクがニューヨークから戻ってきたのだ。
大きなスーツケースを運んでくれたポーターにチップを与えたあと、ネクタイを緩めソファに腰を沈めた。
仕事から帰ってきたばかりなのにノートパソコンを取り出し、何かをチェックし始める。
「社長。お帰りなさいませ。バラの花束ありがとうございました。私の寝室に飾らさせて頂いてます。
あの、部屋探しの方ですが、仕事に追われてまだこれだという物件に巡り合っておりません。もう少し居させて頂いても大丈夫でしょうか?」
「ああ。構わないよ。じっくり探しなさい」
パソコンから目を離し、ドライアイなのか両目をぎゅーと瞑る。
「社長、お疲れですね」
「ああ。長いフライトは苦手だ。また2日後に乗るかと思うとうんざりだよ」
「大変ですね。
そうだ、いちご食べませんか?」
私はガラスボウルに入れたいちごをデレクに見せた。
「…いちご?」
「ストロベリーですよ。このお部屋って素晴らしいけれど、何か欠けてる。
季節感です。日本に住む者は季節感を大事にしなくてはなりません。
だから私、このビルの2階にあるコンビニエンスストアでいちごを買ってきたんです。さっき一つ摘み食いしたんですけど、すっごく甘くて美味しいいちごですよ!」
「ほお。
じゃ、あれもミス・ヒムラが?」