苦手だけど、好きにならずにいられない!
デレクがバーカウンターの方を指差す。そこには桃の花と菜の花が平たい花器に活けてあった。
「はい。
自己流でお恥ずかしいんですが」
「ベリー、ビューティフォー。なるほど。で、日本は今、季節はなんだ?」
えっ…真顔でそんなことを訪ねるデレクに私は驚いた。
でも飛行機、社用車移動という生活で屋外に出ることがないならあり得ることなのかもしれない。デレクがパクリといちごを頬張った。
「春です」
「Oh My God!
こんなに美味しいいちごを食べたのは久しぶりだ!子供の時以来かもしれない。いや、それ以上に美味い。もっとないか?フレッシュないちごがいい!」
両手を広げ、オーバーなジェスチャー。いつのまにかテーブルに置いたガラスボウルは空っぽになっていた。
たかがいちごでオー、マイガッって。
私は吹き出しそうになるのを堪えた。
こんなことで大の男が騒いでいるのもなんだか…カワイイ。
「残念ながら、最後のひとパックだったのでもう売ってないと思います…
新鮮ないちごが召し上がりたいのなら、いちご狩りにでも行かれるのがいいのではないですか?」
社長がいちご狩りとか似合わない。
からかうつもりで言ったのに。