苦手だけど、好きにならずにいられない!
日本とニューヨークの時差もなんのその、朝早くから愛車であるメルセデス・ベンツを操るデレクは長旅の疲れを全く感じさせなかった。
デレクが選んだいちご農園までは高速を使えば約1時間で着く。
ベンツの助手席はナオミの指定席に決まっているけど、今日だけは気にしないことにした。
風は少し冷たいけれど、陽光が眩しく暖かい。
春だなーと思う。草花も木も生き生きとしている。
社長と二人きりで出掛けるなんて、間が持たない気がしたけれど、そんな心配は全く無用だった。
デレクはサービス精神をいかんなく発揮して、カナダや横浜に住んでいた子供時代の話をしてくれたり(お父さんが貿易の仕事をしていたとか)得意の口笛で『オー、スザンナ』や『エーデルワイス』を聴かせてくれたから。
中学時代合唱部だった私の血が騒ぎ、口笛に合わせて日本語訳の歌を歌ってみせたら、デレクはすごく嬉しがり、
「Wonderful!」「Fantastic!」を連発して笑い声の絶えないひと時になった。
高速を下りると海岸沿いの道に出た。
キラキラと光る春の海。