苦手だけど、好きにならずにいられない!
「潮風が気持ちいいから、窓を開けよう」
デレクがいたずらっぽい目をする。
ウインドウが少し下がった途端、待ってましたとばかりに風が吹き込んできて、私の髪を勢いよく舞い上げた。
私は、思わず、きゃっと声を上げた。
デレクがハハハ、とおおらかに笑う。
ダークグレーのツイードのジャケット、臙脂色のセーターとスミレ色のチノパンの組み合わせは何気無く見えて、実は計算し尽くされている。
きっと、ブランドものをデパートの外商かなにかで買っているのだろうな。頭からつま先まで、何もかもが出来過ぎてる。
『男盛り』
38歳のデレクはその言葉がぴったりだ。
自信に溢れていて、タフで、社会的地位があって。行動力がある。
その全てが顔や仕草に現れている。デレクといると怖いものはない。
彫りの深いデレクの横顔を盗み見る。整い過ぎていてちょっと近寄りがたいほどだ。
こんなデレクに愛されるのはナオミくらいのレベルの女性じゃないと釣り合わない。
デレクと私が二人きりでいちご狩りに出掛けることをナオミが知っているかは私の関知するところではないけど、隠し事のようにはしたくなかった。