苦手だけど、好きにならずにいられない!
このいちご農園は、腰の高さまである石垣にいちご苗を植え付けている。
だから少し手を伸ばすだけでいちごが摘めて、とても楽ちんだ。
「社長。お土産、ナオミさんにいちごを買っていこうと思うんです」
ずらりと並ぶ今にもこぼれ落ちそうな赤い実を目の前に、私はそんな提案した。
「オー、グッドアイディア」
デレクは人差し指と親指指でオーケイマークを作るが、気もそぞろといった風。
コンデンスミルクが入ったプラスチックの皿片手に今は宝探しに夢中っていう感じだった。
広いビニールハウスの中は、私達の他に男女4人の若者グループがいるだけで、好きなのを選び放題なのが嬉しい。
いちご畑の中の外国人というのは少し場違い感があってデレクはとても目立つ。
「エクスキューズミー。アーユー、ムーブィ・アクター?」
エプロンにアームカバーを付けた農園のおばさんが尋ねてきた。
「イエス、アイム、ブラピ。スイートストロベリー、ベリージューシィ」
デレクがユーモアたっぷりに応えると、おばさんは真に受けてしまい、
「紙とペン持ってくるからサインして!」と騒ぎ出してしまった。
(全然タイプが違うと思うんだけど…)
「ノーノー、ソーリー。僕はただの外国人」
デレクが引き止めると、あわてんぼうのおばさんは大ウケして「やっだあ!いい男だから本気にしちゃったわよー」
あはははーと笑いながら、デレクの腕を思い切りバシンと叩いた。