苦手だけど、好きにならずにいられない!
その馬鹿力に思わず、OUCH!と声をあげたデレクに私は耳打ちした。
「日本のおばさんは何かあるとすぐ叩くのですよ。悪気はありません。スキンシップと思ってください」
「オーケィ。ノープロブレム」
デレクも笑ってるけど…
年収一億のスーパーエリートサラリーマンをぶっ叩くなんて……
おばさんって本当に怖いもの知らずだ。
私の知らない洋楽がベンツの車内で流れる。それらは朝からずっと私とデレクの間にあって、とても心地良かった。
後部座席には箱に入ったお土産のいちごが三つある。1つはナオミ。1つは寺島先輩の。(もちろんデレクと一緒な件は内緒)
そして、もう1つは私の。
いちご農園のおばさんが、こんなイケメン見たことない、おまけするからまた来てね、と言ってひとパックサービスしてくれたのを私が貰ったのだ。
「これは誰の曲なのですか?」
すっかり暗くなった車窓を眺めながら私が訊くと
「THE Eーーー」
「え?」
デレクの発音が良過ぎて、頭のとこしか聞き取れなかった。
ヒアリング出来なさ過ぎ!
おかしくなって、笑いがこみ上げてきてクスクス笑いだすと、デレクも口の両端を引き上げるようにして笑う。
「キミはよく笑う人だね。会社で見ると、いつも難しい顔をしているのに」