苦手だけど、好きにならずにいられない!
「えっ、そうですか?」
どきりとした。そんな怖くみえてたんだ。
「ああ。ノートパソコン相手ににらめっこだ。眉間をこんな風に寄せてね」
デレクが太い眉でぐっとへの字を作ってみせた。
「やばいですねー自覚ありませんでした!皺になりそう」
私はおどけて自分の眉間を指でゴシゴシとこすった。
言われてみればそうかも。ベリロイの宣伝チーフの肩書きを貰ってからというもの、自分の意見をどうやって押し通すかとか、プランの進捗状況のことばかり考えていた気がする。
『ワールド・リゾート・フェア』直前には寺島先輩と言い合いになってしまい、気まずくなりかけたっけ…
街の灯りを眺めながら、思いを馳せていたら、無言になってしまっていた。
数分の沈黙を破ったのはデレクの方だった。
「リコ。ディナーは何がいい?」
えっ、私のこと名前で呼んだ?
でも嫌じゃない。なんか嬉しい。
車のデジタル表示を見るとPM5:30。
いちごをお腹いっぱい食べたし、遅いランチは海辺のドライブインで豪勢な海鮮丼をいただいたので、あまり空腹ではなかった。