苦手だけど、好きにならずにいられない!
でも、大好きな野菜天ぷらを頼んだからいいや。
と毒づいていた私は、数分後、水蕎麦のシンプルな美味しさに感動することになる。
二八蕎麦を長野の名水とやらに浸すと、麺がプルプルしてやたら食感がいい。
「すごいですね!こんなに香りがいいお蕎麦って初めて食べました!ほのかに甘くってまろやかで…」
「そうだろう?僕は蕎麦が大好きでいろんな店の蕎麦を食べたが、ここのはナンバーワンだ」
デレクは箸の使い方がとても綺麗だ。蕎麦の啜り方も静かだし、昼食の海鮮丼の時もそうだったけれど、食べるのがびっくりするくらい早い。
私が一枚目の水蕎麦を食べ終えると、ちょうど良いタイミングで、二枚目の蕎麦をニシイさんが持って来てくれた。
お次のは蕎麦に塩をまぶして頂く。
「お塩の方は、お、小笠原諸島の天然塩、になります」
ニシイさんが説明してくれた。
「塩で蕎麦を食べるなんてありそうでない発想ですね。しょっぱいはずなのに蕎麦に絡むとほのかに甘みが出るのが不思議ですね」
グルメリポーターみたいな私にデレクはうんうん、と柔和にうなづく。