苦手だけど、好きにならずにいられない!
「せっかくですから私、野菜じゃなくて海鮮を頂くことにします。好きですから。ちゃんと伝票書き換えておいて下さいね」
「はい。わかりました…」
ホッとした表情でニシイさんは去っていった。
気を取り直して揚げたての天ぷらに舌鼓を打つ。衣がさっぱりしていて、空腹じゃない胃袋にもどんどんイケてしまう。それにしてもセレブな店の天ぷらは、具材もすごい!
「プリプリ肉厚な海老でしたねー!あんな大きなの初めて食べました!イカもコリコリしてて、イカの味してめちゃめちゃ美味しい!キスも身がふんわりしてて、全然苦味とかなくって!」
つまらないセリフを吐いて、ついつい騒いでしまう自分をどうにも止められない。
だってでも、こんなに贅沢な食事は人生のうちでそうそうないもん、とか悟りの境地を開いたりして。
「ククク…」
デレクがほうじ茶の入った湯のみを手に小さく笑ったのを私は、見逃さなかった。
「あー、社長。なぜ笑うんですか?私、変なこといいましたか?」
こんな敷居の高い店に連れてこられちゃって、舞い上がっちゃってる女を見たら、笑っちゃうのも無理ないけど。
「いや…君はとてもスイートな女性だ」
青い瞳が真っ直ぐに私を射る。
どきりと心臓が跳ねたあと、私はさっきのニシイさんみたく挙動不審になってしまった。