【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
ナイスゆずくん……!フォローしてくれてありがとう……!
これで音ちゃんに誤解されずに済む。ほっとして「そっか」とつぶやいた音ちゃんに気をとられていたら、一度離れていた綺世の指が優しく絡んだ。
「そういうことだ。
……お前らが察しの良い人間で助かった」
「ふふ、今度借りは返してもらうからね?」
「ああ、好きにしろ」
綺世とゆずくんが短く会話を交わしたかと思うと、誰にともなく「行くぞ」と声をかける綺世。
ごく自然に、音ちゃんは万理の隣に並ぶ。やっぱりふたりはお似合いで、万理の方が良いと言っていた綺世の言葉を思い出した。
「ねえ、綺世。
どこに、ご飯食べに行くの?」
聞きたいことは、たくさんあるのだけれど。
それのどれもうまく自分の中で消化できなくて、何気なく浮かんだ質問を投げかける。一瞬考えた綺世は、わたしが蒼ノ月の幹部たちと出会った店の名を口にした。
「あら、今日は百夜月のみんなで来てくれたの?
音ちゃんも一緒だし……ひのちゃんも一緒ね」
──ふわり。
やわらかく微笑んだその人は、この間もお店にいた美人さん。どうやらほかのメンバーも顔見知りなようで、アサギさんは?とゆゆが尋ねていた。
「サキさんは、今日は友だちと会うからってお休みなの。
そもそもサキさんはこの店のオーナーってだけでほかにもお店抱えてるから、毎日はいないのよ」
「1日ひとりで店開けてるの大変だね」
この間と違って、置かれたメニューはランチ用。
ガパオライスやらタコライスやらご飯ものから、ホットサンド系あるし、パスタもある。各々好きに注文していたら、彼女が後ろの扉を開けて中に呼びかけた。
「ん〜?どした、かなちゃん」
ひょっこり。
顔をのぞかせたのは、綺麗な男の人。どうしてわたしの周りって綺麗な男しかいないんだろうか。……というかこの人、ものすごく色っぽいんだけど。