【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「ちょっと手伝って欲しいんだけど」
「ん〜、りょーかい。
相変わらずここは高校生いっぱいくるねえ」
サロンを受け取った彼が、それを腰に巻いて手を洗うと手際よく彼女の手伝い。息がぴったりだ。
彼の左手薬指にも指輪があるし、もしかしてこのふたりって……
「チサトさん、ここにいるの珍しくないですか?」
「ああ、そうだねえ。
あんま店に顔出さねえんだけど、今日兄貴いないって言うからさ〜」
「仕事してたのに邪魔してごめんね」
「んーん。いいよ別に。
休みなんだから全然顔合わさずに終わるより、せっかくならかなちゃんと一緒にいたいし」
ふっと、笑みを浮かべてそう微笑んだ彼。
甘い。糖度高い。甘い言葉ってそんなにしれっと言うものだっけ……? 彼の言葉も仕草も、すべて色気を煽って煌めくみたいで、見てるこっちがドキッとさせられる。
「……ひのちゃんも、音ちゃんも。
こういう口先だけ甘い男に騙されちゃだめよ?」
真顔で。
何を言うのかと思えば。彼女が至極真剣にそう言うから、思わず音ちゃんと顔を見合わせて笑ってしまった。
「口先だけ甘いって……
ちゃんとかなちゃんのこと大事にしてるつもりだけど〜」
「昔の話よ。めんどくさかったもの」
「……めんどくさいってものすごいグサグサくる。
俺はむしろ、かなちゃんみたいな辛辣な女になってほしくねえわ〜」
「何か言った?千郷」