【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「で、なんだっけ?
ひのちゃんに彼氏がいるっていう噂の話?」
「そ、そうだよー!
みんな学校来たばかりの僕に『倉敷さんに彼氏できたってほんと!?』って聞いてくるんだからめちゃくちゃ困ったんだよー!?」
「まあ、間違ってもうっかりゆゆちゃん以外の幹部に聞いてくるやつらはいないだろうしねえ」
……この学校の生徒たちは、みんな。
どこか百夜月の幹部たちを、一目置いてる。それを知ったのは綺世の彼女になってからのことだけれど、ゆゆはその中でも一番ほかの生徒たちと仲が良い。
百夜月の噂は、いつもゆゆがほかの生徒から質問攻めにされているし。
……まあ、今回はわたしの噂みたいだけど。
「で、どうなのひのちゃん!?」
「……できたっていうか、結構前からいるわよ」
そう言ってもぐもぐとおにぎりを頬張っていたら、机の上に置いていたスマホが震える。
画面に触れれば、メッセージを送ってきたのはどうやら同じ中学の男子で。写真が送信されました、というメッセージが気になって開いてみれば。
「っ、けほ、」
「え、ひのちゃんどうしたの!?」
「っ、ごめ、だいじょうぶ……」
ゆゆが渡してくれたペットボトルの水を受け取って、引っかかりかけたおにぎりを流し込む。
そのまま続けざまに送られてきたのは『ナイスショットじゃね?』というふざけた文で。
『盗撮しないで!!』と強めに返信しておく。
送られてきた画像は、すこし前にわたしが帰り道で夕李と出くわしたときのものだ。
……しかも、ぎゅっと抱き寄せられてるやつ。
誰に見られてるかもわからないのに、地元で夕李とこうやって恋人っぽいことをするものじゃないなとしみじみ思う。