【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「ひのちゃんって、綺世のどこが好きなの?」
っ、何その問いかけ……!
思わず食べてたパスタで噎せかけたんですけど……! 隣の綺世が大丈夫か?って背中さすってくれてるんですけど……!
「音、ひのちゃんびっくりしてるから」
「だって、気になるもん」
「……まあその答えをいちばん気にしてるのは綺世だろうけどね」
噎せかけただけだけれど、吸い込んだ酸素が変なところに入ったようで咳き込むわたし。
ずっと背中をさすってくれていた綺世に「ありがとう」とお礼を言ったら、息苦しさで自然に浮かんだ涙を彼が指で拭ってくれた。
「逆に、音ちゃんはどこが好きなの……?」
ひとまず落ち着こうと、カフェオレを口にする。
質問を質問で返したわたしに、音ちゃんは「ずるいよー」と口を尖らせたけれど。
「そんなの全部に決まってるじゃん。
嫌いなとこなんて、ひとつもないよ」
ほら、ひのちゃんは?と。
尋ねてくる音ちゃんにすこし苦笑して。口からこぼれたのは、たぶん"彼女のフリ"でもなく、彼女だった頃の言葉でもなく。……わたしの、本心。
「音ちゃんとかぶせるみたいで申し訳ないけど……
ひとつ言うなら、ぜんぶ好きよ」
ただ、音ちゃんと違うところがある。
彼女は、嫌いなところなんてひとつもないと口にしたけれど。
「……だけど、同時に全部嫌いなの。
付き合ってて、同じだけの愛情をくれるならいい。……でも、わたしがもし"片想い"なら。振り向いてくれない綺世の全部が、好きだけど嫌いよ」
……何言ってるんだろうわたし。
音ちゃんの前で、付き合ってるフリをしなきゃいけないのにどうして片想いなんて口にしてるんだろう。……音ちゃんも、ちょっと困った顔してる。