【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「不思議な会話だね。
それじゃあまるでひのちゃんが片想いしてて、わたしが綺世の彼女みたい」
「………」
「本命はひのちゃんだって、わかってるのに」
音ちゃんに伝えた情報だと、それは正しい。
けれど、わたしたちはあくまで裏切り者を追放するために手を組んだだけの関係で。綺世が誰を好きでいるのかは、綺世本人にしかわからない。
重くなった雰囲気を何とかしようと口を開きかけたところで、タイミング良く鳴るスマホ。
ほっと胸をなで下ろして確認した画面には、彼の名前。外に出ようと立ち上がりかけたらチサトさんが「ここで出ていいよ~」と言ってくれたから。
「もしもし……? どうかしたの?」
小さくお礼を言って、画面に触れた。
音ちゃんにバレないよう彼の名前は出さないけれど、妙に綺世の視線を感じる。
『あ、ひの? 悪い、突然。
ちょっと待ってな、電話代わるから』
代わるって、一体誰に……?
そう思ったのは電話の向こうから聞こえた『お姉ちゃん』とわたしを呼ぶ声で解決した。どうやら、夕李とかのが一緒にいるらしい。
「どうしたの?かの」
『えっと……学校終わって帰ってきたんだけど、鍵忘れちゃって家入れなくて……
お母さん出掛けてていないから、とりあえず誰かの家におじゃましようと思ってたところで夕ちゃんに会ったんだけど、』
お姉ちゃん帰ってこれる……?と。
申し訳なさそうに謝る妹に、「もうちょっとかかるけどいい?」と聞けば、こくこく頷いてるのがわかるような返事が返ってきた。
『夕ちゃんがうち来てもいいって言ってくれてるから、お姉ちゃん来るまで夕ちゃん家にいてもいい?』
「うん、わかった。
迎えに行くから待ってて」