【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
第三章 拗れて交わる愛言葉
・雲に隠れる朧月
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想定外の事態が……起きました。
「おねーちゃん? おねーちゃん!
もうっ、またボーッとしてるでしょ!?」
「ああ……ごめん、かのちゃん」
「むう……
おねーちゃんすぐ別のこと考えて……わたしはおねーちゃんと出掛けるのすごく楽しみにしてたのに……」
「ご、めん。わたしも楽しみにしてたわよ」
むっと拗ねるかのの機嫌を取るように頭を撫でたけど、嫌がる様子はなくわたしの腕に腕を絡ませてくる。
いつも以上に甘えただなと思いながら脳裏を掠めるのは、あの日のこと。──綺世に、駅で、キスされたこと。
離れてから我に返って「ひとりで帰るから!」と彼を突っぱねてしまい。
夕李の家まで迎えにいくはずだったのに顔を合わせづらくなって、駅に着いたからかのに帰ってきてもらうように伝言してもらった。……情けない。
あの日から一週間。
正直な話、夕李とも会ってなければ百夜月の幹部の誰とも会ってない。っていうか会いたくない。
「おねーちゃん、あとで浴衣も見よう?
なんなら先に浴衣でも見に行く?」
「……かのちゃん。花火大会一緒に行こうか」
わたしが夕李と付き合ったのは、綺世を忘れるためなのに。
綺世に好きと言われて、わたしは綺世が好きで。両想いだなんてそんなの、想定外にも程がある。
ずっとそばにいてくれた夕李に、まさか綺世と両想いです別れてくださいなんて言えるわけもなく。
もちろん綺世に、わたしも好きだと言えるわけもなく。
「えっ、一緒に行ってくれるの!?」
「たまには、ね。
夕李とばっかり過ごしてるって、かのも不満だったんでしょ?」