【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
地元会の暗黙のルールというかなんというか。
カップルは揃って来る、みたいな。わたしと夕李ふくめてカップルは4組いるから、ほかの3組がそうしてるのが習慣になっただけだけど。
『いいよ』と返事をして、クレープふたつを手にこっちへもどってくるかのを待つ。
いつまでも逃げていたって、どうせわたしが綺世を忘れられていないことも、キスされた事実も変わらない。
開き直るわけではないけれど。
それでもこのままじゃいられないから。
「おかえり。いくらだった?」
「おねーちゃんは出さなくていいのっ!
花火大会一緒に行ってくれるから、そのお礼」
「……なら花火大会で好きなもの買ってあげる」
ありがと、とクレープを受け取って。
席についたかのがクレープを頬張るのを見つめていたら、なんとも言えないしあわせそうな表情を見せてくれる。綺世がわたしに幸せそうだと言ってたけど、その気持ちが今ならわかる。
「おねーちゃんとお出掛けするのひさしぶりだね」
「……そうね。いつも一緒にいるから違和感はなかったけど、よく考えたらひさしぶりね」
「よく考えなくてもひさびさだよ!?」
もう、と文句を言いながらわたしの手の中にあるクレープも齧るかの。
しばらく他愛のない話をしながら、クレープを食べて。食べ終わってから、綺麗に切りそろえられたボブヘアに触れる。
「……? おねーちゃん?」
「彼氏できたら、わたしにいちばんに紹介してね?
かのちゃんのこと、大切にしてくれる人だといいけど」
「ま、またわたしの恋バナ聞こうとして……っ。
絶対彼氏なんかできないもん……」