【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「あ~! ひのとゆーり!
手繋いでるし~。もー、ラブラブじゃん!」
結局、伝えられないまま。
集合場所にたどり着いてしまい、地元の子たちに冷やかされると「うっせーよ」と返す夕李。なのに手は離れずに、彼が強く握ってくれていて。
「んじゃあ、お前の惚気聞いてやろーじゃん」
全員集まって軽く写真を撮ってからお店に移動すると、夕李は男子たちに拉致された。
夕李と引き離されたわたしは女の子たちに「夕李とどう?」なんて質問攻めを受ける。どうにもこうにも、わたしは夕李を好きじゃないんだけど。
「普通、だと思うけど……」
もちろん何も知らないみんなには言えるわけがないため、口をつぐんで適度に誤魔化す。
夕李はそれなりに普通の対応をしているらしく、ときどき男子の方から「はー?羨ましすぎだろ」みたいな声が上がっているけど何が羨ましいんだか。
ひの照れないでよーなんて女子のみんなから言われたけど、照れてるわけでもないし。
「ふたりだけの秘密がいいかな、って」と小さく笑ってみたら、惚気だ~!って盛り上がる女子たち。
「……、」
こういう時間は好きだ。
気の知れてる地元のみんなとわいわい騒げて、夕李のことはさておき特別心を揺らされることもない。少なくとも、百夜月のみんなの前とは違ってリラックスできる。
「わたしのことはさておき、みんなは?
高校入ってから絶対に誰か彼氏出来てるでしょ?」
「はいはーい!あたし彼氏できたんだけど!」
「えっ、ガサツ女子代表のユミに出来たの!?
うそー、なんでわたしに出来ないんだろ」
「たぶんそういうとこでしょ」
楽しい、な。
楽しいけど……ひのは?って聞かれて、「わたしも好きな人と両想い」と素直に言えたなら、もっと楽しかったんだろうと思うわたしは、最低で。