【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-



「あ~! ひのとゆーり!

手繋いでるし~。もー、ラブラブじゃん!」



結局、伝えられないまま。

集合場所にたどり着いてしまい、地元の子たちに冷やかされると「うっせーよ」と返す夕李。なのに手は離れずに、彼が強く握ってくれていて。



「んじゃあ、お前の惚気聞いてやろーじゃん」



全員集まって軽く写真を撮ってからお店に移動すると、夕李は男子たちに拉致された。

夕李と引き離されたわたしは女の子たちに「夕李とどう?」なんて質問攻めを受ける。どうにもこうにも、わたしは夕李を好きじゃないんだけど。



「普通、だと思うけど……」



もちろん何も知らないみんなには言えるわけがないため、口をつぐんで適度に誤魔化す。

夕李はそれなりに普通の対応をしているらしく、ときどき男子の方から「はー?羨ましすぎだろ」みたいな声が上がっているけど何が羨ましいんだか。



ひの照れないでよーなんて女子のみんなから言われたけど、照れてるわけでもないし。

「ふたりだけの秘密がいいかな、って」と小さく笑ってみたら、惚気だ~!って盛り上がる女子たち。




「……、」



こういう時間は好きだ。

気の知れてる地元のみんなとわいわい騒げて、夕李のことはさておき特別心を揺らされることもない。少なくとも、百夜月のみんなの前とは違ってリラックスできる。



「わたしのことはさておき、みんなは?

高校入ってから絶対に誰か彼氏出来てるでしょ?」



「はいはーい!あたし彼氏できたんだけど!」



「えっ、ガサツ女子代表のユミに出来たの!?

うそー、なんでわたしに出来ないんだろ」



「たぶんそういうとこでしょ」



楽しい、な。

楽しいけど……ひのは?って聞かれて、「わたしも好きな人と両想い」と素直に言えたなら、もっと楽しかったんだろうと思うわたしは、最低で。



< 126 / 245 >

この作品をシェア

pagetop