【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「んーん。さんきゅ」
「お腹すいたからわたしにも分けてね」
「ん。ほら、あーん」
会話もしていたからか、程よい熱さになっているたこ焼き。
爪楊枝で刺してひのの口元に持っていけば、一瞬戸惑ったような顔をしたものの。口を開いて、ぱくりと食べる彼女。
「……ん、おいしい、」
「ひのちゃん俺に食べさせてよ」
ね?と。
甘く微笑んでみたら、嫌そうな顔をしたくせに結局「あーん」と食べさせてくれる。……次綺世に会ったら自慢しよう。俺の命が危なそうだけど。
1パックのたこ焼きを、ふたりで分けて全部食べ終えたあと。
ふと思い出したように、ひのが「なんでみやとカップルみたいなことしてるんだろう」と真顔でつぶやく。……いまさらすぎるよ、お嬢さん。
「つーか、ぶっちゃけ俺すごい腹減ってたんだわ〜。
朝飯食ってから今まで何も食ってなかったこと思い出した」
「……不健康」
成長期なんだから、と眉尻を下げるひのに小さく笑って。
とん、とその肩に寄りかかるように身を寄せる。左手でひのの右手を掬うように持ち上げて、俺の時計の秒針よりも月明かりを反射するそれに、目を細めた。
「……綺世からのプレゼントだろ?これ」
「音ちゃんに嘘をつくための、ね」
……嘘をつくための、ねえ。
そんな理由であいつは指輪を贈ったりしないこと、ひのが一番よくわかってるはずなのに。気づきたくねえのか、気づいてないフリなのか。