【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「ちょっとね……
どうかしたの?何か用事?」
「ええ、と……
明日の花火大会のときの髪型、どんな感じがいいか試して欲しくて来たんだけど……おねーちゃん疲れてそうだから、やめとくね」
練習しなくてもおねーちゃんなら当日綺麗にアレンジしてくれるだろうし……!と。
目をキラキラさせるかのに、「はいはい」と笑ってしまう。その瞬間にまた頭に鈍い痛みが走って、寝不足ってつらいなと顔を顰めた。
睡眠薬を飲んでまで、眠りたいとは思わない。
かのが部屋から出て行ったあと、暇つぶしにスマホに触れてみればあまりの画面の眩しさに、たまらずまぶたを伏せた。
「、」
なにか来てるかなと、目に負担がいかないようにゆっくりメッセージを確認する。
その中にめずらしくそなたからのメッセージもあって。何かと思えば、『今日会えねー?』とお誘い。……今日暇なんだけど、寝不足でそれどころじゃないっていうか。
でもひとりで何か考えてるよりはマシかもしれない。
多少頭は痛いけど、動けないわけじゃないし。
いいけどどこいくの?と返信したら、そう経たないうちに『ゆゆのバイト先』と端的な答え。
わかったと返事してシャワーを浴びるために下に行き、お母さんに出掛ける旨を伝えたらちょっと呆れた顔をされた。
「安静にしてなさいって言ったのに」
「でも、家にいても仕方ないし」
無理はしないから、と押し切ってシャワーを浴びたあと。
身支度をして、軽くボーッとしてから11時の待ち合わせに間に合うように家を出た。かのにも、おねーちゃん無理しちゃダメだよ?って言われたけど。
「……、綺世」
夏休みも、きっとあっという間に終わる。
そのときどんな顔をすればいいの。昨日みやから聞いた彼の深い愛情を。……受け止めることがいまさら怖くなる。
だってそうでしょう?
わたしは情緒不安定なのを理由に、綺世から逃げて。噛み合わなくなって知らなかった彼の気持ちを知ろうともせずに、夕李に縋った。